放射線測定器とは?

放射線測定器は、放射線の検出と測定に使用される重要な装置です。放射線の種類によって異なる用途や検出方法があるため、どのように選べばいいか分からない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、放射線測定器の種類と選び方について解説します。放射線を扱う現場に従事している方は、測定方式など違いを把握し適切な機器を選定してください。

放射線測定器とは

放射線測定器は放射線を検出し、その強度や性質を測定するための装置や機器の総称です。放射線作業者や医療従事者などの個人の被ばく値や、特定の場所での放射線レベルの監視に使われます。

放射線の安全性や環境への影響を監視するために必要な機器です。医療、エネルギー産業、環境保護、原子力、科学研究など、多くの分野で重要な役割を果たしています。

放射線測定器の選び方

放射線測定器は、測定できる放射線の種類や検出方式によって適した商品が異なります。以下に選定の基準を解説しているので、一つずつ見ていきましょう。

測定できる放射線の種類で選ぶ

放射線測定器を選ぶときは、現場で測定や検出が必要な放射線を測れる事が重要です。どの放射線を測りたいのかを明確にし、目的に応じた測定器を選定しましょう。

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放射線の種類対象使用例
アルファ線アルファ粒子の量やエネルギーを測定放射性物質の表面検査
ベータ線ベータ粒子の測定医療分野での診断や治療放射能汚染の監視
ガンマ線高エネルギーなガンマ線の強度核施設の安全管理や放射線治療の制御

アルファ線は紙1枚で遮ることができ、皮膚に触れた場合でも被曝のリスクは低い放射線です。ベータ線はアルファ粒子よりも質量が小さいため、物質に対する影響はアルファ粒子に比べて小さく、薄い金属板で遮ることができます。

上記2つの放射線は遮ることも難しくないため、体内に入る影響はさほど心配はありません。しかしガンマ線は、電磁波で体内に容易に侵入し内部被曝のリスクが高いため、放射線が関わる現場ではガンマ線を測定し、安全を管理することが不可欠です。

用途で選ぶ

放射線測定器の使用用途には、大きく分けて空間線量計測用(サーベイメーター)と個人線量計測用に分かれます。

空間線量計は「空間の放射線量を測る」機器です。特定の空間や場所での放射線レベルの監視が目的で、原子力発電所や放射線治療施設で使用されています。

その場所の放射線量を測るので、気温計のイメージに近いでしょう。

一方、個人線量計は個人の被ばく数を測定する機器で、放射線作業者や医療従事者、核施設の作業員など、個人の被曝をモニタリングするために使用されます。

「個人の被ばく量」を測る機器なので、体温計に近いイメージです。

検出方式で選ぶ

放射線の測定方式は、以下の3つが主流です。

  • 電離箱
  • GM計数管(ガイガー・ミュラーカウンタ)
  • シンチレーション式

測定の目的によって適正な測定器は異なります。以下の表を参考にしてください。

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特徴用途
電離箱型高エネルギー光子 (30 keV 以上) の測定に適しているCTスキャンなどの医療画像処理における放射線レベルの測定
GM計数管GM計数管は電離箱よりも感度が高い原子力施設の作業員が着用する個人線量計で放射線レベルを測定
シンチレーション式アルファ、ベータ、ガンマ粒子を含む幅広い種類の放射線の検出が可能土壌や水中の放射性汚染の検出など、環境モニタリングにおける放射線レベルの測定

電離箱型

電離箱は放射線がガス中で電離を引き起こす原理に基づいて測定します。医療や核エネルギー産業などで使われ、精密な線量測定が必要な場合に適した方式です。電離箱は高感度で精度が高いですが、比較的本体が大きく高額です。

検査対象エリアの空間にどのくらいの放射線が存在しているかを測定し、主に定量的な放射線測定に使用されています。

空間線量の正確な測定に適していますが、低線量の放射線の測定にはあまり向いていません。

GM計数管(ガイガー・ミュラーカウンタ)

GM計数管(ガイガー・ミュラーカウンタ)は電離箱と同様に電離を利用して計測し、ガス中の電離が電流パルスとして検出され、パルスが数えられることで放射線の存在が測定されます。

非常に感度が高く低エネルギーの放射線の検出には向いていますが、ガンマ線の検出には計数効率が低いため向いていません。作業員の体表面の放射線量を測定するなど、個人の被ばく値を測る場面で使われます。

シンチレーション式

シンチレーション式は、放射線が物質と相互作用し、光を発生させる原理に基づいて測定します。医療診断や放射線分析に使用され、放射線の種類やエネルギーを特定できる点が特徴です。

測定範囲が広く、線量と線量率の両方を高感度で測定可能です。

装置は複雑で高価ですが、ガンマ線、アルファ線、ベータ線の検出が可能なため、空間放射線量を測って体への影響を調べる時に使われます。

放射線測定器は用途に合わせて選定する

放射線は人体に有害な影響を与える可能性があります。そのため、測定を行い放射線量を把握することは、放射線被ばくを防止するために欠かせないことです。

放射線測定器は測定方式や測定できる放射線の種類によって適切な機器が異なるため、違いを把握し選定しましょう。

医療現場や土壌検査、原子力施設など、放射線が使われている現場に従事している方は、放射線測定器を導入し安全の確保に努めましょう。

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